猫エッセイ 第170回 名人戦2004・「濃い」大会とは? 前回エッセイで「世界大会カウントダウン」モードに入っておきながら、 いきなりまた国内大会の話題で、なんだか恐縮ですが、 9月20日に開催された名人戦での感想です。 日本選手権の日程が前倒しになった影響を受けて、 今年は秋の開催となりました。 (来年の日本選手権には「名人枠」が2つできるのでしょうか?) ここしばらくの大会に見られる共通の特徴として、 「とにかく初心者フレンドリー」 の傾向が見られる、と言ってきました。 しかしこの名人戦は、どちらかというとベテラン好みの システムであり、私は勝手に 「濃い大会」 と分類し呼んでいます。 その根拠ですが。 ●ゲーム数が多い ●順位ポイント制度 ●決勝卓は6名 ●名前がいい、歴史がある 最後のはまあ、雰囲気ですが(笑) ●ゲーム数が多い 予選3回戦+決勝戦というスタイル。 上っ面の形式だけ見れば、日本選手権の全国大会と同じスタイルです。 1日で開催される大会としては、異例とも言える過密な試合数でしょう。 また後述するように「順位ポイント」制度であるため、 「1、2ゲーム目をモノポリー勝利して、3ゲーム目はお休み」 という体力温存作戦も発生しえません。 (1位のポイントは7ポイントであり、2勝した14ポイントでは決勝に届かない) 優勝するためには必ず4ゲームをこなす必要があります。 初心者や「ちょと立ち寄り」感覚の参加者(ライトプレイヤ)にとっては、 正直、疲れる(飽きる?)のではないでしょうか。 当然、2ゲームよりも3ゲームでの成績評価のほうが、 「安定して勝ち続ける実力」が問われることになります。 実際、決勝卓進出の選手を見ると、毎年 「濃いなぁ〜」 と、思わず呟きたくなるような顔ぶれです。 腕に覚えのあるプレイヤほど、数多くのゲームでの成績評価は 「望むところ」でしょうから、 ベテランやフリークにとっては狙いに来る大会であるはずです。 ●順位ポイント制度 名人戦の成績は今年も「順位ポイントシステム」でした。 1位は(モノポリー勝ちかどうかにかかわらず)7点。 2位以下は、テーブルの人数によりますが、1点または2点づつ減っていき、 最下位は1点となります。 「ドル資産」は同点の場合のみ考慮されます。 前日に行われた日本代表決定戦のような 「シェアポイント」と比べると、 誰でも暗算で計算できる、比較的簡単なシステムだといえるでしょう。 そういう意味では、ライトプレイヤにも配慮があります。 サークルなどではこのようなシステムも多く見られますが、 「早いゲーム」「モノポリー決着するゲーム」が高く評価されてきた 最近の大会の傾向からみて、いまやこのようなシステムは 「結構珍しいシステム」でしょう。 (言葉は悪いかもしれませんが、前世紀のシステム、と呼ぶ人もいるそうです) 実際に決勝に残った選手の成績を見ていますと、 2勝することまではほぼ必須ですが、 残りの1ゲームの「順位」が何位だったのか、でボーダーとなっています。 つまり、「勝てそうにないゲーム」において、 「1つでも順位を上げるための努力」 が、生命線になるのです。 このあたりの技術も経験が活きてくる場面が多いでしょうね。 あまり見苦しいとマナー的に問題となるので微妙ですが、 2位争い、3位争いが白熱するというのも 「濃いゲーム」 になる理由のひとつです。 参考までに、 成績ページにある全選手の、予選3回戦の成績を、 「総資産(ドル)順」にリソートしてみましょう。 なんと決勝卓メンバーのうち1人は、 「上位25位までにも入らない」 という、とんでもない成績であったことが発覚します(笑) もちろん今回のシステムを承知の上で、 「資産ではなく勝率」重視の戦術というものをとっているのだと思われますが、 システムによって評価は全く変わってくることがわかるかと思います。 ●決勝卓は6名 一般に、経験豊富なベテランプレイヤにとって 6人ゲームというのは5人ゲームよりも 「好き」「やりやすい」 と思われているようです。 交渉のパターンが豊富、自力などの運の要素が減る、 といったことが理由でしょう。 逆に、ライトプレイヤは、 「なかなか自分の手番が回ってこなくて退屈」 というのが正直な感想となる場合も多いでしょうね。 まあマルチゲーム全般にいえる特徴かもしれません。 初心者にやさしい大会を目指す意味で、 決勝の人数を5人とする大会も増加傾向にあるかと思われます。 (日本選手権の決勝も現在は5人ゲームです) 名人戦は6人です。 「どうぞたっぷり心ゆくまで、濃い交渉、練りに練った策略を、ぶつけ合ってください」 なんだか主催者側の、こんな台詞が聞こえてきそうではありませんか? もちろん、全ての要素が「濃い」というわけではありません。 3人の成績合計順位で表彰する「団体戦」は、 「濃さ」の側面も若干ありますが、それよりも、 「友達に声を掛け合って大勢で参加してください」 という「人数増やし」の目的、「裾野広げ」の意図が大きいと思います。 実際、参加者が100名を超えるオープン大会というのは現在そうそうありません。 また、決勝卓の「大版解説」も、 「歴史と格式のある名人戦だから」というわけではなくて、 観客サービスの一環が大きいでしょう。 「決勝戦のゲームを肴に、楽しくやってください」 という意図だと思われます。 そうでなければ、選手本人にまで聞こえるマイクの声で 「いやー、この提示は意味不明ですねー、不利ですねー」 などとバッサリ言ったりはできないですよね(笑) いや、決勝メンバーはみんな濃いプレイヤばかりだから、 少々のマイクの声くらいではびくともしないと見るべきなのかな(笑) どちらにしても、 ベテランも満足の「濃さ」と、 ライトプレイヤも疲れない「優しさ」、 そして誰にでも次回も是非来ようと思わせる「サービスレベル」、 難しいようですがこれら全てを同時に追求していく 「至高にして至難」な課題に挑み続ける大会として、 今後も名人戦にはがんばってほしいのです。 どんな立場の人から見ても、 「さすが名人戦」 といってもらえるような、高いレベルの完成度を期待したいのです。