猫エッセイ 第154回 一夜漬け特訓の意義 前回の予告に反して、全国大会のレポートではありません(笑) その前にちょっとだけ小話を入れますね。 実は先日、知人に頼まれて、ある「初出場選手」のための特訓、 いわば「一夜漬け特訓」に協力してまいりました。 それは誰なのか、という話はここではあまり意味がないのでおいておきまして、 モノポリーで「一夜漬け特訓」に意義があるのか、という話です。 関係ないですが私は学生時代はもっぱら「一夜漬け」派でした(笑) ので、「直前になにかできるのか」というのは、個人的に興味深いテーマです。 モノポリーナイトの話(題149回)でも触れましたが、 現場での基本は「一言アドバイスする」です。 延々と得意の展開論をしゃべくってもうんざりされるだけです(笑) 事前特訓の場合も、この一言が二言になるくらいで、基本的には変わらないと思います。 全くの初心者、相場も展開も読めないような初心者に対しては、 とにかくこの色は何軒以上たつ条件ならやりなさい、駒位置に気をつけなさい、 自分が振ってから家を建てなさい、といった基本中の基本を 「暗記させる」のに精一杯だと思います。 まさしく試験前の学生の「一夜漬け」ですね(笑) しかし、いくら初出場とはいえ、全国大会への出場権をゲットした、 それだけでも間違いなく一定の「実力」があるはずのプレイヤの場合はどうでしょう。 わざわざ直前に「どーのこーの」と言うのはあまり意味がないような気がします。 教える側は「何か役に立とう」という意識が先走りがちになるため、 やや極端な事例、普通とは違う展開、複雑なテクニックの「伝授」に走ってしまい、 かえって混乱させてしまう、今期の「好調の波」を乱してしまう、ということにすら なりかねません。 「今年はあなたはついているのだから、黙っているから自分の思ったとおりにノビノビと やってごらんなさい」でいいのではないでしょうか。 意義があるとすれば、「本人が特訓を望む」場合に限り、以下のパターンでしょうか。 ●ゲーム経験自体が少ないプレイヤには、自信を持たせる ●全国大会出場経験のないプレイヤには、平常心を持たせる ●経験は十分だがブランクがあるプレイヤには、普通にプレイして思い出させる それぞれみていきましょうか。 ●ゲーム経験自体が少ないプレイヤには、自信を持たせる モノポリーはたとえ初心者であっても大会でいきなり勝てる可能性のあるゲームです。 「全国大会に進んでしまったけど、まだ○ゲームしかしてことなくて…」 なんて選手がいてもおかしくはありません。というか毎年1人くらいはいます。 そういう選手に対しては、基本は「自信をもたせる」です。 ツキはあるはずなので、あとは臆せず堂々と、ノビノビとやってもらいたいものです。 最低限の「やってはいけないこと」「やってもいいこと」だけ「暗記」してもらう。 その内容に則している条件を「自信を持って、堂々と」提示する。 具体的には、私は比較的「先行」を勧めています。 初心者がベテラン相手に勝ちきるパターンは先行大逃げ、 と決め付けているわけでは決してないのですが、 相手に経営させる交渉はいろいろなパターンがあって複雑になり、 一夜漬けでは「伝えきれない」からです。 だから、 「先行でこの色なら何ドル以上残しならGO」 という単純明快な「暗記」のみをさせる。 具体的には、ウルトラマン版に入っている「経営の目安」ですね。 あの内容は、一見かなり乱暴ですが、実はシンプルで初心者にはわかりやすくていいと思っています。 何よりも「自分から揃える交渉を持ちかける」ことができるようになります。これは大きい。 多くのベテラン選手は「後追い型」ですから、交渉の土台に乗りやすいですしね。 もちろん本当は、駒位置や他の物件の売れ残り状況、他人の資産状況くらいはざっと考えたいですが、 これはあまり強調しません。 下手に強調しておくと、 「今はまだ他の色が売れていないから…」「お客さんがいるから…」などといった 「売り文句」に過敏に反応して、結果的にきつめの条件で「やらされてしまう」恐れのほうが強いからです。 例え多少「空気が読めずに自己主張するだけで意固地」になってしまってでも、 「騙されて交渉相手に一方的に儲けさせてゲームを壊す」よりは迷惑にならないでしょうしね。 では「暗記」した条件以上で経営するチャンスが最後までめぐってこなかったらどうするのか? 最初に言ったように、「ツキがある」ことが大前提の選手です。 そんな事態にはならないはずです。というか、なった時の対策までは一夜漬けでは無理です。 普通の大会ではありません。全国大会です。小手先のテクニックでどうにかできる試合とはなりません。 付け焼刃でそんな細かい、しかも正しく実践できるかどうか不安な「技術」を教えるよりかは、 最低限の「暗記」だけ徹底してもらいます。そして「自信」をもって堂々と交渉。 このほうが絶対に勝率は上がると思います。 ●全国大会出場経験のないプレイヤには、平常心を持たせる モノポリーの経験自体は長いのですが、全国大会にはこれが初出場だという選手もいますね。 こういう選手にとっての最大の敵は「緊張」です。 ただでさえ初出場初ゲームというのは緊張がつきものです。 ましてや「苦節○年、初出場」のような選手だと、 「次回はまた○年後まで出場する機会が巡ってこないかもしれない」 みたいな妙なプレッシャーを自分自身に無意識のうちにかけてしまうものです。 その結果、普段は動く状況下なのに判断が遅れて、他者にイニシアチブを奪われてしまう、 そんな展開に陥りがちです。それこそベテラン選手の思う壺です。 こういう人に対して、下手に親切のつもりで 「全国ではここが普段と違うから気をつけて・・・」 みたいな言い方をするのは、 かえって緊張をあおるだけの恐れが少なくない気がするのです。 私はこういう人たちには、ただ一言、 「普段と一緒だよ(笑)」 と、(偉そうにですが)言うことにしています。 リラックスして自然体で臨めば、必ず結果を出せる実力をもっている選手ならば、 こういう言い方のほうがいいと思うのですが、いかがでしょうか。 ●経験は十分だがブランクがあるプレイヤには、普通にプレイして思い出させる 最後のこのパターン、実はないようで結構あるのです。 経験も実績も十分、ただし最近は仕事が忙しく半年くらいプレイしてないなぁ…。 こんな選手に対する処方箋はただひとつ、 「濃い面子で集まって1ゲームでも多くプレイする」 です。 要はリハビリですね。細かいアドバイスや気遣いは無用です。 本気でガンガン倒しにいってあげます(笑) あとは勝手に本人がカンを取り戻してくれます。 選手の中には、 「ブランクが長いほどツキが蓄積されてダイス目がよくなる」 というオカルト派もいて、こういう人には微妙ですが、 基本的には前日にでも軽く4ゲーム(笑)くらいやれば、肩もあったまってくるでしょう。 もちろん、自分自身のウォーミングアップにもなるので、望むところです。 以上はあくまで基本のパターンで、人によりけりなのですが、 まあ考え方としてはこんな風に思っています。 ちなみに今回の「特訓」は、どうだったのかといいますと、 対象としては1番目のパターンに近かったわけですが、 私たちコーチ陣(?)からは、 「大きな大会は精神力だよ」 とだけ、(偉そうにですが)言っておきました。 これについての詳細な解説は、本人について語ることになりますので、しませんが、 何度も言うように「一言だけ」言うのがポイントですね。 本番で頭が真っ白になって計算も何もできないような状況下でも、 「その一言」だけは思い出して欲しい、と思って言いました。 最後には個人の「芸風」やお互いの「相性」なんかもあって、 とても一概にはいかないものですが、 頼まれて義理を果たすために最低レベルのことはしたいと思った時など、 いろいろ考えた末に、こんなふうになっしまっています。 みなさんはどんな風にアドバイスをしているでしょうか。